21.第7回 TOC <視点シリーズ>
≪定義≫
TOCとは、Theory of Constraintsの略であり、制約理論と訳されている。
イスラエル物理学者 Eliyahu Goldrattが1984年に「The Goal」を出版、世界的に有名なコンセプトになりました。日本では、2001年にダイヤモンド社から翻訳され、物語風の展開は発行後半年で35万部、既に50万部を越えています。全米では250万部を販売しています。
TOCは、事業運営上の慢性的な課題をビジネスシステム全体の問題として捉え解決していく、理論体系です(
Fig1
)。慢性的な課題を、ビジネスシステム全体の問題として捉え、『事業成果は、トータルプロセスの中で一番弱いプロセスに依存する』と言う原則から目標達成を妨げている制約条件を明確にし、除去、継続的に成果を上げることを指向した『理論体系』と考えることが出来ます。
≪主要な視点≫
個人的に、TOCの重要な視点は、「慢性的な課題」にターゲットを当てている点にあると思います。慢性的な課題の代表的なものには、
初期に想定する「事業パフォーマンス」が上がらない(それなりの戦略的手段を講じているのであるが)
売れない(CSなどの活動を推進しているのであるが、結果として顧客ニーズに対応できない)
突発的な問題に対応する応急処置が定常化し、本質的な解決が先送りになってしまっている
各部門の利益が優先され、部門間の軋轢が全社的改革のバリアーとなっているといったものがあると思います。
こうした問題に対し、TOCでは、3つの構成要素でアプローチします(
Fig2
)。
スケジューリング、プロセスに代表されるロジスティクス、
業績評価基準を明確にし、適切な評価、対応を実施する業績評価
弱体なプロセス、クリティカルチェーンを成約として捉える問題解決&思考プロセス
上記の3つの構成要素に関する詳しい説明は割愛します。詳しくは、ホームページを検索すると各種コンサルテーションなどの機関から、詳細な情報を得ることが出来ます。
≪ベストプラクティスすべき視点≫
TOCでは、弱体なプロセスにターゲットを当てて改革を実施します。この視点だけを取ると、特段新しいコンセプトではありません。所謂、ネックプロセスに改革のターゲットを当てるコンセプトとしては、
Fig3
に示すようなものがあります。
例えば、クリティカルパスとは、………
リードタイムを左右する決定的なアクティブティ群を指す。表現を変えると、リードタイムを長期化させている決定的なアクティビティ群を探し、リードタイム短縮には、クリティカルパスを解消することである。クリティカルパスを「プロセスのボトルネック」と表現することもある。(
経営プロセス改革アソシエイツ■一口用語解説
より)・CTQ(詳しくは、
経営プロセス改革アソシエイツ■6.CTQ、VOCの考え方
を参照願います)
共通する視点は、【≪事業パフォーマンスネック≫を見つけ、≪改革のキー≫とする】点です。用語に関しては、あまり厳密に考えないことをお勧めします。しかし、気になる方は、各社のホームページをご覧ください。
繰返しますが、TOCとは、一見複雑に見える問題に対して、シンプルな解決策を論理的に提示するマネジメントのコンセプトです。TOCを活用することによって事業活動の成果を妨げている中核的な制約条件を解消するものなのです。
TOC提唱者ゴールドラットの素晴らしい点は、理論体系を常にバージョンアップしている点です。
1984年に「The Goal」を提唱していますが、その原典は、OPTと呼ばれる生産管理ソフトに根源があります
このOPTから10年以上経過してから、「The Goal」に繋がった訳です
ゴールを定着化させるために、AGIを1986年に設立しています
「思考プロセス」に関しては、1980年代後半から開発に着手し、1994年に公開しています
最近では1997年に「クリティカルチェーン」を公表しています。
この中で、クリティカルチェーンについて考えて見ましょう。
スケジューリング、日程短縮に関する代表的な手法としては、「PERT/CPM」というコンセプトがあります。これは、『スケジューリング手法の1つであるが、米国アポロ計画を予定通りに完遂させたことで有名。1つのプロジェクトをアクティビティに細分化すると共に、アクティビティ間の相互関係、前後(先行、遅行)関係、アウトプット、インプット、各アクティビティの工数、スキルなどを明確化、制約条件を考慮してトータルリードタイムの短縮化を実現するコンセプト 』(
経営プロセス改革アソシエイツ■一口用語解説
より)です。
TOCのクリティカルチェーン(
Fig4
)という考え方は、このPERT/CPMとは、大きく異なります。
CPMでは、個々のアクティビティ(プロセス)に対して、時間を見積もりますが、その際に、個々のアクティビティについて、リスクを考慮するのに対し、TOCでは、50%の確率で終了する時間を見積もり、リスクはプロジェクト全体で考慮します。
PERTでは、個々のリスク見積が納期の長期化となります。また、元来、プロジェクトは実行してみないと分からないという不確実性が伴います。益々、納期が遅延します。TOCでは、各アクティビティでは、「何時着手すべきか」といったことは考えず、来たモノから順次着手します。この発想はトヨタの誇る「カンバン方式」です。プロジェクト全体のモニタリングにより、プロジェクトの短縮化、納期遵守を実現する考え方です。この意味で、TOCはスケジューリングに対して、新しい考え方を提示していると思います。
昔、日本の自動車企業には、生産リードタイム短縮について2通りの考え方がありました。A社は、標準時間を正確に見積、ベルトラインを編成しました。B社は、大まかな考え方で、生産ラインを編成し、問題がある工程を集中的に改善し、問題を解決すると、ベルトコンベアの速度をあげることを繰り返し、生産パフォーマンスを順次、向上させました。PERTとTOCの関係から、思い出しました。
「20.第6回 成果主義」
「22.第8回 MOT」
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