22.第8回 MOT <視点シリーズ>
≪定義≫
MOTとは、Management of Technologyの略であり、日本語訳としては「技術経営」というのが一般的です。MITのスローンスクール、スタンフォード大学の講座が、その起源と言われています。
MOTには、諸説があるが、
・「技術」を経営の視点から扱う
・研究開発から、オペレーションまでの全プロセスを
・戦略から事業計画、成果の維持までの一連の活動を対象とする
といったものが、キーワードと思われます。
要は、今までパフォーマンスの問題に対して、ブラックボックスとされていた「研究開発を含めた技術戦略、技術管理」の改革を行うというフレームワークでもあります。
≪主要な視点≫
MOTが、経営コンセプトして脚光を浴びた理由の1つに、「死の谷」と言うものがあると思われます。「死の谷」とは、起業家が通過しなければならない“インベンション(発見)とイノベーション(技術革新)との谷間”を意味するものとして、2002年バーン・エラーズ下院議員が提唱したものです(
Fig1
)。
「死の谷」という概念は、事業戦略的視点から、
Fig2
のようなサイクルとして整理することが出来ます。
・企業は資金を投入して、
・研究開発を実施し、技術を獲得します。
・その技術を活用して、製品やサービスを顧客に提供し、
・事業利益を獲得します。
・企業は、事業利益を資金源に、更に研究投資を実施します。
このサイクルのパフォーマンスを向上させることが、MOTの本質を考えることも出来ます。
≪ベストプラクティスすべき視点≫
MOTは、日本企業にとって重要な指摘であり、日本における「MOTブーム」を形成する視点の1つとなっています。その根拠を、
Fig3
に見ることが出来ます。
スイスに本拠を置く、IMDは毎年「国際競争力ランキング」というものを発行しています。
Fig3
は、
・日本は調査対象国60カ国の中で23位にランクされている
・研究開発投資額(官公庁を含む)、特許取得率では、世界をリードしている
・インフラ環境についても、世界的に優位にある
※ インフラ環境とは、基礎インフラ、技術インフラ、科学インフラ、評価制度などの総合指標
・しかし「ビジネスの効率性」は30位以下であり、
・「企業化精神の広がり」は、60か国中最下位にランクであり
・「上級マネジメントの国際経験」は、58位(ワースト3)である
といった現状を表しています。この二極化現象を、MOTの視点から見ると「研究開発は十分に実施され、蓄積されているが、事業成果となっていない」という現状を示しています。技術・研究は、マネジメントされていないのです。
「死の谷」コンセプトは、その後、検討対象を拡大し、「魔の川、死の谷、ダーウィンの海(
Fig4
)」という“事業アイデアから事業化までの一連の活動”をマネジメントするコンセプトとして、ビジネス界に受け入れられるようになっています。R&D成果は、幾つかの困難、川、谷、海を確実に越えなければならないのです。
MOTは、バリューチェーン
【
事業を形成するプロセスを定義し、各プロセスが個別のミッションを達成すると共に、プロセス間のシナジー効果が最大となるようなビジネスシステム全体をチェーン化する視点。個々のプロセスが誤った部分最適を追求することを防止すると共に、プロセス間の関連を明確にすることが特徴の1つ。(
経営プロセス改革アソシエイツ■一口用語解説
より)
】
にとって重要な視点を与えると思います。
最後に、MOTの経営的視点を独断的に示しますので、皆様の検討の材料にして頂けばと思います。
・市場ニーズだけが、事業化のKFSではない → マーケティング万能時代への警鐘
→ 市場ニーズを如何に技術で達成するか、差別化するか
・アイデアの“単なる事業化”は参入障壁が低い
→ 継続的利益は確保できない、基幹ビジネスにはならない(=事業リストラには「程遠い」)
・市場ニーズを実現するのは、何らかの技術が必要
→ 技術は評価されなければならない(勿論、ブランドイメージ向上の技術開発も目標化必要)
・技術戦略は事業戦略と無縁ではない → 技術者と戦略担当者とのコミュニケーションが必要
→ 技術者からの歩みよりが必須条件
「21.第7回 TOC」
「23.マネジメント能力の強化」
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